La mer inconue

南仏の地下倉庫に置き去りにしていた古い写真を先日、娘が郵送してくれた。
私は整理下手である。乱雑なりの秩序を保っている人もいるが、私の場合はひたすら乱雑のみで、人生の半分以上の時間を紛失物探しに費やしてきたような気がする。
送られてきた大量の写真にしても乱脈そのもので、日付けもなければ撮影場所のデータなんて残していない。いつ何処で撮ったのか思い出せないものが多々ある。当時の相方も写真が好きだったので、相方が撮ったものも混じっている可能性がある。

この写真もそんな1枚だ。さっぱり記憶にない。奇岩の浜景からするとたぶんブルターニュのカンカールあたりだろうか。晩秋に南仏から最北端のル・コンケの岬まで、途中で迷子になりながら千数百キロあまりを車で走ったことがある。そのときの1枚かも知れない。しかし相方も初冬に仕事でカンカールを訪ねているので、あるいは彼女が撮影した風景かも知れない。場所も日時も撮影者も不明。そんな写真がたくさんある。

ときおり夢を見る。故郷の福岡の地下鉄に乗り、新宿を経由してパリのクリシーの駅で下車すると、そこは南仏のカルカソンヌの城壁の中で、城壁を出ると銃弾の音が響き、サラエボの光景が広がっていたりする。夢は誰しも乱脈なものだろうが、私の夢の乱脈さは何だか少しさびしい。或る土地を愛し、そこにしっかり根を下ろせなかったさびしさを目覚めたときに感じる。
いつの日か、訪ねたことのある土地を再訪したいと思うのだが、それが何処だったのかさえ分からない淡い喪失感とワンセットになっている。