Restaurant au Sant-Malo

本宅のアルバムを増殖する暇も気力もないので、ここで1枚ずつ写真をアップしながらおしゃべりを。
引き続きブルターニュの話である。上図はサンマロのレストラン。飾り物が可愛かったので思わずシャッターを切ったのだが、改めて見るとそれほど可愛いものでもないな。

サンマロは城塞の港である。いかつい建物が湾を囲み、市庁舎のファサードも厳めしい。重厚で、男くさい街であり、そのせいか、このレストランの飾り物が際立って可愛く見えたのだろう。
それともうひとつ、サンマロは「クレープの街」でもある。このレストランの入り口脇でもクレープを売っていたが、いたるところにクレープ屋がある。男くさい街のクレープ屋。この組み合わせはミスマッチのように思えるが、クレープの起源を考えるとそうでもないことが分かる。
海洋性気候で降雨量の多いブルターニュ地方は、海風のせいで塩分をたっぷり含んだ土壌であり、小麦や大麦の栽培には適さず、蕎麦を作らざるを得なかった。つまり貧しいゆえに、蕎麦粉のクレープ(ガレット)が広まったわけで、このあたりの事情は日本の蕎麦の歴史に似ている。

しかし私はこの蕎麦粉のクレープが苦手だ。私の身元引受人で、フランスにおける私の両親と言ってもいい老夫婦がフランスの歳時の習慣をおりおりに教えてくれるのだが、毎年二月二日のシャンドルール祭(ろうそく祭り)にクレープを食べる習わしがあり、その日が来るとご夫婦の家に招かれて、山のような量の蕎麦粉のクレープを食べなければならない。ざる蕎麦なら好物なんだが、ガレットはちょっとなぁ…。
小麦のクレープなら大好きだ。学生の頃、リュクサンブール公園の前に屋台を出すお気に入りのクレープ屋があった。フロマージュのクレープしかなく、今のような多彩なトッピングはなかったが、このフロマージュが抜群に美味かった。そんな思い出があったので、老夫妻から初めてシャンドルール祭のクレープ・パーティーに招かれたときは喜び勇んで出かけたものだが、伝統どおり、由緒正しく、蕎麦粉のそれを食わねばならないとは想定外だった。もごもごと機械的に噛んでは飲み下しつつ、ブルターニュの男たちは質実剛健だったんだなぁと思ったものである。

ちなみに私の娘はチョコレートを塗った小麦のクレープが好きらしい。クレープは菓子じゃないのだ。私も邪道だが、娘はもっと邪道である。